知名度がない高知県の企業が学生に選ばれるには
採用がうまくいかない会社の多くは、母集団が足りないのではなく、届けたい相手に情報が届いていない。掲載して待つ設計のままでは、この距離は縮まらない。
知名度と志望度は別のもの
知名度がないから採用できないという説明は、半分しか当たっていない。学生が会社を知らないこと自体は、個別に声をかければ解消できる。問題は、知った後に志望度が上がる材料が用意されていないことのほうである。
つまり、やるべきは認知を広げることではなく、接点を持った学生に何を伝えるかを決めることである。
社内では当たり前のことが、外では武器になる
自社の強みを聞くと「社員の人柄」「アットホーム」と答える会社が多い。これらは他社と区別がつかないので、採用広報の材料にならない。代わりに、取引先の名前が出せなくても「どういう場面で使われているか」は言えるはずである。
まず社員に聞いてみたい。高知県でこの仕事をしていて、面白いと感じたのはどんな場面だったか。そこで出てくる具体が、そのまま採用広報の素材になる。
ここで書いていることは、採用人数が年に1〜2名の会社と、10名以上採る会社とでは重みが変わる。自社の規模に合わせて、どこまでやるかを決めていただきたい。
発信する場所を絞る
採用サイト、SNS、動画、パンフレット。全部やろうとして全部が中途半端になる会社は多い。人員が限られているなら、場所は一つに絞ったほうがよい。
絞るなら採用サイトが基本になる。スカウトや説明会で興味を持った学生が必ず確認しに来る場所で、ここが空だと接点の効果が消える。
高知県という文脈を使う
会社単独で語るより、高知県の産業や暮らしと合わせて語ったほうが、学生の側に想像の足場ができる。高知で働くとはどういうことかを示したうえで、そのなかでの自社の位置を説明する順番が伝わりやすい。
人口減少が早くから進み、県内の新卒だけで採用計画を埋めるのは現実的でない地域。県外在住のUターン希望者をどう見つけるかが、そのまま採用の成否になる。
まず用意する3点
最初に用意するものは3つでよい。いずれも費用はかからず、社内にある情報を形にするだけで済む。
- 入社1〜3年目の社員が、実際に何をしているかの記録(職種ごとに1件ずつ)
- 勤務地の周辺がどんな場所かが分かる写真と説明
- 選考の流れと、各段階で誰が出てくるかの一覧
高知県の採用を考えるときの基礎データ
高知県の主な産業は農業、水産、食品、紙である。企業の集積は高知市と南国に偏りやすく、四万十に拠点を置く会社ほど、通勤と住まいの条件を先に示さないと比較の土俵に乗りにくい。
県内の主な高等教育機関としては高知大学、高知工科大学が挙げられる。学校経由の接点はここが起点になるが、それだけでは県外に進学した高知出身の学生には届かない。両者は別の対象として設計したい。
四国という括りで見ると、高知の企業が比較される相手は三つに分かれる。四国の同業、高知市に拠点を持つ企業、そして学生が進学先で接している都市部の企業である。どれと比べられているかで、出すべき条件が変わる。
よくある誤解
「地方だから条件で負ける」というのも、半分しか当たっていない。額面では確かに都市部が上回ることが多いが、通勤時間と住居費まで含めた比較にすれば話は変わる。ただし、その計算を学生が自分ですることはない。高知県で働いた場合の数字を、会社の側で用意する必要がある。
「地元の学生は地元志向だから条件は多少劣ってもよい」という理解も危うい。地元で働きたいという前提の上で、条件は他社と比較されている。志向と妥協はまったく別のものである。
「Uターンは本人が決めることだから会社にできることはない」というのも早い。戻るかどうかの判断材料は、住まい・通勤・家族との距離といった仕事の外側にあり、そこは会社が提示できる。
自社に当てはめて考える
読んだ内容を実際に動かすには、自社の現状を確認しておく必要がある。次の項目に答えられるかどうかを見てほしい。
- 高知県のどの生活圏の学生を対象にするかが決まっているかどうか
- 募集要項に勤務地が市区町村まで書かれているかどうか
- 接点の経路ごとに昨年の実績人数を出せるかどうか
- 応募から一次面接までの日数が決まっているかどうか
答えが人によって違う項目があれば、それ自体が発見である。社内で認識が揃っていないまま選考を進めると、面接官ごとに評価がぶれる。
よくある質問
Q. 県内の学生だけでは母集団が足りません。どうすればいいですか。
高知県に限らず、県内在住の学生だけで計画を埋めようとすると早い段階で頭打ちになります。進学で県外に出た高知出身の学生を対象に含めると、母数は大きく変わります。ただしこの層は地元の説明会にも求人媒体にも接していないため、こちらから探しに行ける手段がないと接点が作れません。
Q. 大手と初任給で比べられると勝てません。
額面での比較に持ち込まれると、多くの中小企業は不利になります。高知県で働く場合の家賃や通勤にかかる費用を並べて示すと、手元に残る額での比較という別の土俵が作れます。ただしこの計算を学生が自分ですることはないので、会社側が数字を用意する必要があります。
Q. 内定を出しても辞退されます。
辞退は内定後ではなく選考の途中で決まっています。応募から一次面接までの日数、面接から結果連絡までの日数を決めて学生に先に伝え、その通りに動くだけでも志望度は変わります。あわせて、評価をしない面談(配属予定の部署の社員と話す時間)をどこかに入れておきたいところです。
あわせて読みたい
- 徳島県の新卒採用|医薬品とLEDという世界水準の産業がある一方、県内大学の数が少なく母集団が限られる。
- 香川県の新卒採用|四国の支店経済の中心で、高松に企業の拠点が集まる。
- 愛媛県の新卒採用|今治のタオルと造船、東予の化学・紙という産地型の産業が強く、企業単位ではなく産地として知られている。
- 求人票・募集要項の書き方|求人票は条件の一覧ではなく、読んだ人が自分の一日を想像できる文章であるべき。
- 福利厚生・働き方|制度は数ではなく、実際に使われているかどうかで評価される。
- OfferBox運用代行|運用代行は工数を外に出すことが目的ではなく、毎週まわし続ける状態を作ることが目的。
この記事のまとめ
採用の巧拙は、特別な施策ではなく前提の置き方で決まる。前提を書き出して社内で見せ合うだけでも、噛み合っていない部分が見えてくる。
この記事は、株式会社エージェントベストが新卒採用の支援で得た知見をもとに構成した実務向けの解説です。特定の企業の事例や、年によって変動する統計値は扱っていません。制度・市況・各サービスの仕様は変わりますので、実際の判断にあたっては一次情報をご確認ください。
株式会社エージェントベスト/有料職業紹介事業 許可番号 13-ユ-316964