地方と都市の賃金差|なぜ採用に効くのかを構造から考える
選考の途中で学生が離れていくとき、原因は最後の面接ではなく、最初に何を伝えたかにある。入口で渡した情報が薄いほど、終盤で比較に負ける。
構造を理解する
額面ではなく可処分所得と生活コストで比べれば、見え方は変わる。ただし比較の材料はこちらが用意しないと伝わらない。
この構造は、一社の努力で変えられるものではない。だからこそ、前提として受け入れたうえで打ち手を組む必要がある。
学生側から見るとどうか
企業側の視点だけで考えると、打ち手が空振りする。学生がこのテーマをどう受け止めているかを想像しておきたい。
学生にとって重要なのは、抽象的な傾向ではなく自分の生活がどうなるかである。構造の説明ではなく、生活の具体で伝えたい。
なお、他社がやっているという理由だけで手法を増やすのは避けたい。工数が分散し、どれも中途半端になるほうが採用にとっては痛手になる。
効いてくる場面
地域の相場に対する自社の位置を把握しているかどうかという場面で、このテーマの影響が具体的に表れる。ここを押さえておくと、打ち手の優先順位が決まる。
どの場面で効いているかが分かれば、限られた時間をどこに使うかが決まる。
前提を共有する
この構造を採用担当だけが理解していても、社内の合意は得られない。経営層と配属先に共有しておきたい。
共有するときは、数字ではなく自社で起きた出来事で説明するほうが伝わる。昨年の辞退理由や、選考での学生の反応が材料になる。
地方と都市の賃金差を自社の言葉にする
額面ではなく可処分所得と生活コストで比べれば、見え方は変わる。ただし比較の材料はこちらが用意しないと伝わらない。
自社の話に落とすときは、地域の相場に対する自社の位置を把握している、生活コストまで含めた比較材料を用意している、この二つから確認するのが早い。ここが曖昧なままだと、どの手法を選んでも判断の基準が作れない。
あわせて、昇給の考え方を示せているも見ておきたい。ここは後回しにされやすいが、翌年に同じ議論を繰り返すかどうかの分かれ目になる。
よくある誤解
「学生は条件だけで選んでいる」という見方も、実態とは違う。条件は比較の入口として効くが、最後に決め手になるのは、入社後の自分を具体的に想像できたかどうかであることが多い。
「移住や住まいの支援は費用がかかりすぎる」と考える前に、どこまでなら負担できるかを金額で出してみたい。全額でなくても、金額と条件が明示されていること自体が安心材料になる。
「このテーマは採用担当が理解していれば十分」というのも危うい。経営層と配属先に共有されていないと、必要な条件整備の判断が下りてこない。
自社に当てはめて考える
次の項目は、採用担当だけでは答えられないものを含んでいる。配属先の上長と一緒に確認するほうが早く埋まる。
- 地域の相場に対する自社の位置を把握しているかどうか
- 生活コストまで含めた比較材料を用意しているかどうか
- 昇給の考え方を示せているかどうか
- 額面以外の条件を金額に換算して示せているかどうか
答えが人によって違う項目があれば、それ自体が発見である。社内で認識が揃っていないまま選考を進めると、面接官ごとに評価がぶれる。
よくある質問
Q. 会社単独では変えられない話ではないですか。
構造そのものは一社では変えられません。変えられるのは、その構造のなかで自社がどう見えるかと、誰に情報を届けるかです。打ち手はこの2つに絞って考えるほうが現実的です。
Q. 自治体の制度は使えますか。
年度ごとに要件が変わるうえ、申請の工数もかかります。使えたら加点という位置づけにして、制度がなくても成立する採用計画を先に組んでおくほうが安全です。
Q. 地方であること自体が不利ではないですか。
条件によります。通勤時間と住居費は、都市部の企業が給与で追いつけない領域です。不利な部分と有利な部分を分けて、有利な側を金額で示せているかを確認したいところです。
あわせて読みたい
- Uターン就職|出身地に戻る意思のある学生は確実にいるが、こちらから見つけに行かない限り出会えない。
- Iターン・Jターン就職|縁のない土地を選ぶ学生は、仕事より暮らしから入ることが多い。
- テレワーク・二拠点勤務|地方企業がリモートを部分的にでも認められると、対象にできる学生の範囲が一気に広がる。
- 住宅手当・社宅・寮|地方採用では住まいの条件が志望度を直接動かす。
- 親の理解(オヤカク)|地方の新卒採用では、保護者の理解が結果を左右する。
- 応募者管理と選考の可視化|高機能なツールを入れる前に、いま誰がどの段階にいるかを一枚で見られる状態を作るほうが先。
この記事のまとめ
今年の採用で分かったことを、来年の担当者が読める形にして残す。これをやっている会社とやっていない会社の差は、3年も経てば埋めがたいものになる。
この記事は、株式会社エージェントベストが新卒採用の支援で得た知見をもとに構成した実務向けの解説です。特定の企業の事例や、年によって変動する統計値は扱っていません。制度・市況・各サービスの仕様は変わりますので、実際の判断にあたっては一次情報をご確認ください。
株式会社エージェントベスト/有料職業紹介事業 許可番号 13-ユ-316964