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東京都の新卒初任給と待遇設計|金額だけで比較されないために

人手が足りないから採用する、という順番で動くと、必ず急いで決めることになる。急いだ採用は入社後にずれが出やすく、翌年また同じことを繰り返す。

初任給は比較される前提で設計する

初任給の金額は、応募するかどうかの入口では強く効き、入社を決める段階では思ったより効かない。この性質を踏まえると、入口で足切りされない水準を確保したうえで、決め手は別に用意するという設計になる。

東京都の相場に対して自社がどの位置にいるかは、一度確かめておきたい。知らずに据え置いていると、応募の段階で外されていることに気づけない。

額面ではなく手取りと生活コストで語る

東京周辺の家賃相場、通勤にかかる時間と費用、車が必要かどうか。この3点を金額として出すだけで、額面の比較とは別の土俵が作れる。

生活コストを持ち出すときは、都市部を下げる書き方をしないほうがよい。事実を並べて判断は学生に委ねたほうが、結果的に信用される。

前提として、採用手法に万能なものはない。合わないものを続けるより、合わないと分かった段階で早く手を引くほうが、結果的に採用人数は増える。

昇給の考え方まで書く

学生が本当に知りたいのは初任給ではなく、3年後・5年後にどうなっているかである。ところが多くの募集要項は初任給で止まっていて、その先が書かれていない。

等級や評価制度が整っていない会社もあるが、それ自体は問題ではない。「まだ制度化していないが、こういう考え方で決めている」と正直に書くほうが、曖昧な表現でごまかすより信用される。

手当は金額と条件をセットで

住宅手当や通勤手当は、東京都の企業にとって強い訴求になる。とくに都外から来る学生にとっては、住まいの確保が最大の不安要素だからである。

使われていない制度は、載せても信用を減らすだけである。何人が使っているかを答えられる制度だけを書くほうが、結果的に伝わる。

見直しの順番

手をつける順番を決めておきたい。予算と社内の合意を踏まえると、おおむね以下の順になる。

  • 入口で足切りされない初任給の水準を確保する
  • 住まいに関する支援(金額と条件)を明示する
  • 昇給の考え方を言語化して募集要項に載せる
  • 入社3年目の実例を、職種ごとに1件ずつ用意する

東京都の採用を考えるときの基礎データ

東京都の主な産業は情報通信、金融、卸売、サービスである。企業の集積は東京と八王子に偏りやすく、立川・町田に拠点を置く会社ほど、通勤と住まいの条件を先に示さないと比較の土俵に乗りにくい。

都内の主な高等教育機関としては東京大学、東京科学大学、一橋大学が挙げられる。学校経由の接点はここが起点になるが、それだけでは都外に進学した東京出身の学生には届かない。両者は別の対象として設計したい。

関東という括りで見ると、東京の企業が比較される相手は三つに分かれる。関東の同業、東京に拠点を持つ企業、そして学生が進学先で接している都市部の企業である。どれと比べられているかで、出すべき条件が変わる。

よくある誤解

「東京都には学生がいない」という言い方をよく聞くが、正確ではない。都内の在学者だけを数えるとそう見えるだけで、進学で都外に出た東京出身の学生まで含めれば対象は決して少なくない。足りていないのは学生の数ではなく、その層に届く手段のほうである。

「知名度がないから採用できない」という説明も、そこで止めると打ち手が出てこない。知らない会社であることは、個別に声をかければ解消できる。問題は、知った後に志望度が上がる材料が用意されていないことのほうである。

「合同説明会に出れば知ってもらえる」という期待も、実際には裏切られやすい。ブースに座って待つ形では、知名度のある企業に人が流れる。出展するなら、事前の告知と事後の個別連絡まで含めて設計しないと投資が回収できない。

自社に当てはめて考える

記事の内容をそのまま持ち込む必要はない。自社の条件に照らして、次の項目のうちどれが欠けているかを確認するところから始めたい。

  • 東京都のどの生活圏の学生を対象にするかが決まっているかどうか
  • 募集要項に勤務地が市区町村まで書かれているかどうか
  • 接点の経路ごとに昨年の実績人数を出せるかどうか
  • 応募から一次面接までの日数が決まっているかどうか

埋まっていない項目が多いときほど、全部を一度に片づけたくなる。しかし同時に動かすと、どれが効いたのか分からなくなる。一つずつ変えたい。

よくある質問

Q. 都内の学生だけでは母集団が足りません。どうすればいいですか。

東京都に限らず、都内在住の学生だけで計画を埋めようとすると早い段階で頭打ちになります。進学で都外に出た東京出身の学生を対象に含めると、母数は大きく変わります。ただしこの層は地元の説明会にも求人媒体にも接していないため、こちらから探しに行ける手段がないと接点が作れません。

Q. 採用の専任がいません。何から手をつけるべきですか。

手法を増やすより、やらないことを決めるほうが先です。昨年それで何人採れたかを手法ごとに数えて、ゼロだった手法は今年やらないと決める。空いた時間を残した手法に集中させるほうが、結果的に採用人数は増えます。

Q. 地元の学生に絞ったほうがいいですか。

絞るかどうかではなく、両方を別の対象として扱うのが現実的です。東京都在住の学生には学校経由や地域のイベントが効き、都外に出た出身者にはこちらから個別に声をかける手段が要ります。同じ手法で両方を追うと、どちらも取りこぼします。

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この記事のまとめ

最後に残るのは、学生に対して正直だったかどうかである。伝えにくいことを先に伝えた会社は、採用人数が少なくても入社後に崩れにくい。

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この記事は、株式会社エージェントベストが新卒採用の支援で得た知見をもとに構成した実務向けの解説です。特定の企業の事例や、年によって変動する統計値は扱っていません。制度・市況・各サービスの仕様は変わりますので、実際の判断にあたっては一次情報をご確認ください。
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