知名度がない和歌山県の企業が学生に選ばれるには
同じ募集要項を数年使い続けている会社は少なくない。市場も学生の関心も動いているのに、伝える内容だけが止まっていれば、反応が落ちるのは当然である。
知名度と志望度は別のもの
知名度がないから採用できないという説明は、半分しか当たっていない。学生が会社を知らないこと自体は、個別に声をかければ解消できる。問題は、知った後に志望度が上がる材料が用意されていないことのほうである。
つまり、やるべきは認知を広げることではなく、接点を持った学生に何を伝えるかを決めることである。
社内では当たり前のことが、外では武器になる
自社の強みを聞くと「社員の人柄」「アットホーム」と答える会社が多い。これらは他社と区別がつかないので、採用広報の材料にならない。代わりに、取引先の名前が出せなくても「どういう場面で使われているか」は言えるはずである。
言語化の出発点は、社員に「この仕事で面白いと思った瞬間」を聞くことである。抽象的な理念より、この具体のほうが学生に届く。
なお、他社がやっているという理由だけで手法を増やすのは避けたい。工数が分散し、どれも中途半端になるほうが採用にとっては痛手になる。
発信する場所を絞る
採用サイト、SNS、動画、パンフレット。全部やろうとして全部が中途半端になる会社は多い。人員が限られているなら、場所は一つに絞ったほうがよい。
絞るなら採用サイトが基本になる。スカウトや説明会で興味を持った学生が必ず確認しに来る場所で、ここが空だと接点の効果が消える。
和歌山県という文脈を使う
和歌山・田辺・橋本といった地名は、県外の学生にとっては手がかりのない記号である。どんな街で、通勤にどれくらいかかり、休日に何ができるのか。この情報を出している会社は少ないので、出すだけで差がつく。
大阪に隣接しながら県内大学が少なく、進学とともに出ていった学生を戻す設計が要る。紀南は移動時間が長く、勤務地の説明を省くと辞退の理由になる。
まず用意する3点
採用広報に手をつけるなら、次の3つから始めたい。どれも予算をかけずに作れる。
- 入社1〜3年目の社員が、実際に何をしているかの記録(職種ごとに1件ずつ)
- 勤務地の周辺がどんな場所かが分かる写真と説明
- 選考の流れと、各段階で誰が出てくるかの一覧
和歌山県の採用を考えるときの基礎データ
和歌山県の主な産業は鉄鋼、化学、果樹農業、水産である。企業の集積は和歌山市と田辺に偏りやすく、橋本に拠点を置く会社ほど、通勤と住まいの条件を先に示さないと比較の土俵に乗りにくい。
県内の主な高等教育機関としては和歌山大学、和歌山県立医科大学が挙げられる。学校経由の接点はここが起点になるが、それだけでは県外に進学した和歌山出身の学生には届かない。両者は別の対象として設計したい。
近畿という括りで見ると、和歌山の企業が比較される相手は三つに分かれる。近畿の同業、和歌山市に拠点を持つ企業、そして学生が進学先で接している都市部の企業である。どれと比べられているかで、出すべき条件が変わる。
よくある誤解
「採用は人事の仕事」という切り分けも、中小企業では機能しにくい。配属先の上長が何を任せたいかを言語化していないと、求める人物像も決まらず、面接での判断もぶれる。
「まず採用サイトを作る」という順番も、実は後回しでよいことが多い。採用サイトは興味を持った学生が確認しに来る場所であって、認知を作る場所ではない。先に必要なのは、和歌山県の学生や和歌山出身者と接点を持つ手段のほうである。
「面接は人柄を見る場」という言い方も、そのままでは評価がぶれる。人柄という言葉が指すものは面接官ごとに違うので、実在する社員から逆算して行動で書いておく必要がある。
自社に当てはめて考える
実行に移す前に、いまの状態を書き出しておきたい。書き出してみると、思っていたより決まっていないことが見つかる。
- 和歌山県のどの生活圏の学生を対象にするかが決まっているかどうか
- 募集要項に勤務地が市区町村まで書かれているかどうか
- 接点の経路ごとに昨年の実績人数を出せるかどうか
- 応募から一次面接までの日数が決まっているかどうか
答えられなかった項目のうち、最も影響が大きそうなものを一つだけ選び、いつまでに誰がやるかを決める。ここまで決めて初めて、点検が実行につながる。
よくある質問
Q. 求人媒体への掲載はやめるべきですか。
やめる必要はありませんが、位置づけは変えたいところです。媒体は「知っている人が来る場所」であり、知らない人と出会う場所ではありません。認知を作る手段を別に持ったうえで、受け皿として使うのが噛み合います。
Q. 採用にかけられる予算がほとんどありません。
予算をかけずにできることを先に済ませたいところです。募集要項に勤務地と仕事内容を具体的に書く、応募から面接までの日数を短くする、辞退理由を記録する。この3つはどれも費用がかかりません。
Q. 保護者への説明まで必要ですか。
地方の新卒採用では、保護者の理解が結果を左右することがあります。会社案内を学生本人にしか渡していないなら、そこに伸びしろがあります。所在地・事業内容・雇用条件が第三者にも分かる形の資料を1枚用意しておくだけでも違います。
あわせて読みたい
- 滋賀県の新卒採用|京阪神への通勤圏でありながら製造業の工場が集まる、地方としては恵まれた立地。
- 京都府の新卒採用|大学が集まり学生は多いが、卒業後は大阪・東京へ出る流れが強い。
- 奈良県の新卒採用|大阪への通勤者が多い住宅地型の県で、「地元で働きたいが働く場所が少ない」という層が確実にいる。
- オンライン面接・Web説明会|オンラインは移動時間の制約を外すため、地方企業にとっては県外学生に会える手段になる。
- 開封率・返信率の改善|開封されない原因と、開封されたのに返信がない原因はまったく別。
- 応募者管理と選考の可視化|高機能なツールを入れる前に、いま誰がどの段階にいるかを一枚で見られる状態を作るほうが先。
この記事のまとめ
最後に残るのは、学生に対して正直だったかどうかである。伝えにくいことを先に伝えた会社は、採用人数が少なくても入社後に崩れにくい。
この記事は、株式会社エージェントベストが新卒採用の支援で得た知見をもとに構成した実務向けの解説です。特定の企業の事例や、年によって変動する統計値は扱っていません。制度・市況・各サービスの仕様は変わりますので、実際の判断にあたっては一次情報をご確認ください。
株式会社エージェントベスト/有料職業紹介事業 許可番号 13-ユ-316964