和歌山県の新卒採用市場|中小企業が置かれている状況と、勝ち筋の見つけ方
施策を増やしても採用人数が増えないのは、工数が分散しているからである。手を広げるほど一つあたりの密度が下がり、どれも決め手にならなくなる。
和歌山県の採用市場をどう捉えるか
和歌山県の採用市場は、県内で完結しているようでいて完結していない。和歌山・田辺・橋本のそれぞれが別の通勤圏を持ち、そのうえで県外の企業とも比較されている。自社がどの圏で誰と比べられているかを押さえないまま手法の話に進むと、打ち手がぼやける。
大阪に隣接しながら県内大学が少なく、進学とともに出ていった学生を戻す設計が要る。紀南は移動時間が長く、勤務地の説明を省くと辞退の理由になる。
産業構造が採用の前提を決めている
鉄鋼や化学といった和歌山の主要な産業は、そのまま学生が思い浮かべる「和歌山で働くこと」のイメージになっている。そのイメージの内側にいる会社は説明が省ける代わりに横並びで比較され、外側にいる会社は説明の手間がかかる代わりに独自の立ち位置を取れる。
どちらが有利という話ではない。前者は条件面の整備、後者は事業の説明に力を入れるべきで、力の掛けどころが違うだけである。自社の立ち位置を取り違えたまま他社の真似をすることが、いちばん成果につながらない。
なお、制度やサービスの仕様は変わる。この記事の内容は考え方の部分を中心にしているが、具体的な手続きは必ず一次情報で確認してほしい。
学生の数ではなく、接点の数を数える
母集団が足りないという相談を受けたとき、まず確認するのは年間で何人の学生と直接話したかという数字である。和歌山県の企業でこれを即答できる会社は多くない。接点の総量を把握していない状態では、増えたか減ったかの判断すらできない。
数えるときは、合計ではなく経路ごとに分けることが肝心である。和歌山の企業で多いのは、学校経由と紹介で大半が埋まっていて、そこが細った年に一気に採れなくなるという形である。
中小企業が取れる勝ち筋は3つに絞られる
規模で勝てない会社が新卒を採れている理由は、たいてい3つに集約される。一人に任される範囲が広いこと、決めるまでが速いこと、そして暮らしの条件を具体的に示せること。いずれも小さいからこそ成立する強みで、大手には用意しにくい。
重要なのは、この3つを社内の実感ではなく学生が検証できる形で出すことである。「風通しがいい」ではなく「入社2年目が担当している案件の規模」まで書けたとき、初めて比較の材料になる。
まず決めること
市場の理解だけでは動き出せない。次の3点を、確定でなくてよいので先に置いておきたい。置いた前提が違っていたら、翌年に直せば足りる。
- どの生活圏の学生を対象にするか(県内のみか、県外在住の出身者まで含めるか)
- 何人を、どの部署に、いつ配属するか
- 採用に使える予算と、担当者が月に確保できる時間
和歌山県の採用を考えるときの基礎データ
和歌山県の主な産業は鉄鋼、化学、果樹農業、水産である。企業の集積は和歌山市と田辺に偏りやすく、橋本に拠点を置く会社ほど、通勤と住まいの条件を先に示さないと比較の土俵に乗りにくい。
県内の主な高等教育機関としては和歌山大学、和歌山県立医科大学が挙げられる。学校経由の接点はここが起点になるが、それだけでは県外に進学した和歌山出身の学生には届かない。両者は別の対象として設計したい。
近畿という括りで見ると、和歌山の企業が比較される相手は三つに分かれる。近畿の同業、和歌山市に拠点を持つ企業、そして学生が進学先で接している都市部の企業である。どれと比べられているかで、出すべき条件が変わる。
よくある誤解
「知名度がないから採用できない」という説明も、そこで止めると打ち手が出てこない。知らない会社であることは、個別に声をかければ解消できる。問題は、知った後に志望度が上がる材料が用意されていないことのほうである。
「学生は都会に出たがる」と決めつけるのも危うい。和歌山県での勤務を希望している学生は実際に存在するが、その層は地元の説明会にも求人媒体にも接していないことが多い。見つけられないことと、いないことは別である。
「採用は人事の仕事」という切り分けも、中小企業では機能しにくい。配属先の上長が何を任せたいかを言語化していないと、求める人物像も決まらず、面接での判断もぶれる。
自社に当てはめて考える
ここまでの内容を自社に当てはめるとき、確認しておきたいのは次の点である。答えられない項目が、そのまま次に手をつける場所になる。
- 和歌山県のどの生活圏の学生を対象にするかが決まっているかどうか
- 募集要項に勤務地が市区町村まで書かれているかどうか
- 接点の経路ごとに昨年の実績人数を出せるかどうか
- 応募から一次面接までの日数が決まっているかどうか
答えが人によって違う項目があれば、それ自体が発見である。社内で認識が揃っていないまま選考を進めると、面接官ごとに評価がぶれる。
よくある質問
Q. 県内の学生だけでは母集団が足りません。どうすればいいですか。
和歌山県に限らず、県内在住の学生だけで計画を埋めようとすると早い段階で頭打ちになります。進学で県外に出た和歌山出身の学生を対象に含めると、母数は大きく変わります。ただしこの層は地元の説明会にも求人媒体にも接していないため、こちらから探しに行ける手段がないと接点が作れません。
Q. オンラインでの選考だけで内定を出してもよいのでしょうか。
対面の機会をどこかに一度は入れたほうが、入社後のずれは減ります。ただし和歌山県の企業が県外の学生を対象にする場合、最初から対面を求めると接点そのものが作れません。序盤はオンラインで完結させ、終盤で一度来てもらう(交通費の扱いを先に明示する)という順番が現実的です。
Q. 学生から見た自社の魅力が分かりません。
社内で当たり前になっていることほど、外から見ると特徴になります。鉄鋼や化学に関わる仕事であれば、自社の製品やサービスが最終的に誰の手に届いているかを説明できるだけでも、学生の見方は変わります。社員に「この仕事で面白いと思った瞬間」を聞くところから始めるのが早道です。
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この記事のまとめ
全部を一度にやる必要はない。この記事のなかで、自社がまだ手をつけていないものを一つだけ選んで、次の採用シーズンの頭に置いてみてほしい。
この記事は、株式会社エージェントベストが新卒採用の支援で得た知見をもとに構成した実務向けの解説です。特定の企業の事例や、年によって変動する統計値は扱っていません。制度・市況・各サービスの仕様は変わりますので、実際の判断にあたっては一次情報をご確認ください。
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