宮城県のUターン・Iターン就職を採用につなげる
採用の相談を受けると、多くの会社が手法の話から始める。ところが実際に効くのは、誰に向けて何を伝えるかを決め直すという、手法より前の段階であることが多い。
戻りたい学生は、こちらから探さないと出会えない
宮城県を出て県外の大学に進んだ学生のうち、一定数は宮城に戻ることを選択肢として持っている。ただし彼らは県内の説明会に来られないし、県内の求人媒体も見ていない。待っている限り出会えないという一点が、Uターン採用の最大の難所になる。
東北では例外的に学生が集まる県で、県外の大手も仙台に説明会を持ち込んでくる。「学生はいるのに採れない」という、地方としては珍しい形の競争が起きる。
出身地で探せる手段を使う
学生のプロフィールに出身地や希望勤務地が載っているサービスなら、県外に住んでいるUターン候補を直接探せる。求人を出して待つ形では代替できない機能で、地方企業にとっては最も投資対効果の高い部分になる。
検索条件を出身地だけに絞ると対象が少なくなりすぎるので、希望勤務地や実家の所在地といった項目も併せて見たい。本人が明示していなくても、高校名から推測できる場合がある。
なお、制度やサービスの仕様は変わる。この記事の内容は考え方の部分を中心にしているが、具体的な手続きは必ず一次情報で確認してほしい。
戻る理由は仕事以外にある
Uターンを考える学生の理由は、家族・住環境・生活コストといった仕事の外側にあることが多い。だからこそ、募集要項に仕事のことしか書いていない会社は候補に入らない。住まい、通勤、家族との距離をどう支援できるかを先に書きたい。
帰省の時期に合わせて面談を組む、初回はオンラインで完結させる、交通費の扱いを先に書いておく。こうした細部の配慮が、実際に会えるかどうかを左右する。
Iターンは仕事より暮らしから語る
宮城に縁のない学生を迎えるIターンでは、説明の順番がさらに変わる。仕事の魅力を語る前に、その土地で暮らすことが現実的に成立すると示さなければ、検討の土俵に乗らない。
仙台・石巻・大崎のどこに配属される可能性があるのかを、地図つきで示すだけでも印象は変わる。知らない土地の地名は、学生にとって判断材料にならないからである。
入社後に戻ってこられる設計にする
Uターン・Iターンで入社した社員は、地縁が薄いぶん孤立しやすい。住まいの手配から、同期との関係づくり、地域での生活の立ち上げまでを、採用の一部として設計しておきたい。
ここを採用担当の気配りに任せると、担当者が代わった瞬間に再現できなくなる。やることを一覧にして、誰が担当しても同じ水準になる状態にしておきたい。
宮城県の採用を考えるときの基礎データ
宮城県の主な産業は卸売・小売、情報通信、水産加工、自動車である。企業の集積は仙台市と石巻に偏りやすく、大崎に拠点を置く会社ほど、通勤と住まいの条件を先に示さないと比較の土俵に乗りにくい。
県内の主な高等教育機関としては東北大学、宮城大学、東北学院大学が挙げられる。学校経由の接点はここが起点になるが、それだけでは県外に進学した宮城出身の学生には届かない。両者は別の対象として設計したい。
北海道・東北という括りで見ると、宮城の企業が比較される相手は三つに分かれる。北海道・東北の同業、仙台市に拠点を持つ企業、そして学生が進学先で接している都市部の企業である。どれと比べられているかで、出すべき条件が変わる。
よくある誤解
「宮城県には学生がいない」という言い方をよく聞くが、正確ではない。県内の在学者だけを数えるとそう見えるだけで、進学で県外に出た宮城出身の学生まで含めれば対象は決して少なくない。足りていないのは学生の数ではなく、その層に届く手段のほうである。
「採用は人事の仕事」という切り分けも、中小企業では機能しにくい。配属先の上長が何を任せたいかを言語化していないと、求める人物像も決まらず、面接での判断もぶれる。
「まず採用サイトを作る」という順番も、実は後回しでよいことが多い。採用サイトは興味を持った学生が確認しに来る場所であって、認知を作る場所ではない。先に必要なのは、宮城県の学生や宮城出身者と接点を持つ手段のほうである。
自社に当てはめて考える
記事の内容をそのまま持ち込む必要はない。自社の条件に照らして、次の項目のうちどれが欠けているかを確認するところから始めたい。
- 宮城県のどの生活圏の学生を対象にするかが決まっているかどうか
- 募集要項に勤務地が市区町村まで書かれているかどうか
- 接点の経路ごとに昨年の実績人数を出せるかどうか
- 応募から一次面接までの日数が決まっているかどうか
項目を埋めた結果は記録に残しておく。翌年の担当者が同じところから考え直さずに済むのは、この記録があるかどうかで決まる。
よくある質問
Q. 勤務地はどこまで具体的に書くべきですか。
市区町村までは必ず書きます。仙台・石巻・大崎のどこなのかで通勤も住まいもまったく変わるため、都道府県名だけでは学生が自分の毎日を想像できません。あわせて通勤手段(車が必要かどうか)と、複数拠点がある場合は配属の可能性がある拠点をすべて挙げておくと、終盤での辞退が減ります。
Q. 求人媒体への掲載はやめるべきですか。
やめる必要はありませんが、位置づけは変えたいところです。媒体は「知っている人が来る場所」であり、知らない人と出会う場所ではありません。認知を作る手段を別に持ったうえで、受け皿として使うのが噛み合います。
Q. 学校のキャリアセンターに行っても相手にされません。
キャリアセンターは、送り出した学生がどうなるかに責任を感じています。実績のない会社の求人をいきなり前に出すことはしません。求人票ではなく「どんな仕事を、どんな学生に任せたいか」を説明する資料を持って、複数年かけて関係を作る前提で臨みたいところです。
あわせて読みたい
- 北海道の新卒採用|学生も企業も札幌圏に集まる一方で、道北・道東は面積が広く、説明会に足を運んでもらう前提の採用が成り立ちにくい。
- 青森県の新卒採用|県内の大学が限られるため、進学と同時に県外へ出た学生をどう呼び戻すかが採用の主戦場になる。
- 山形県の新卒採用|内陸(山形・米沢)と庄内(鶴岡・酒田)で経済圏が分かれており、「県内」とひとくくりにすると通勤圏の説明が曖昧になる。
- 大学・学校との関係づくり|キャリアセンターとの関係は一年では作れない。
- 高卒採用|高卒採用は学校を通した独自のルールで動く。
- スカウト運用のKPI|送信数だけを追うと文面の質が落ちる。
この記事のまとめ
全部を一度にやる必要はない。この記事のなかで、自社がまだ手をつけていないものを一つだけ選んで、次の採用シーズンの頭に置いてみてほしい。
この記事は、株式会社エージェントベストが新卒採用の支援で得た知見をもとに構成した実務向けの解説です。特定の企業の事例や、年によって変動する統計値は扱っていません。制度・市況・各サービスの仕様は変わりますので、実際の判断にあたっては一次情報をご確認ください。
株式会社エージェントベスト/有料職業紹介事業 許可番号 13-ユ-316964