福島県の採用で住まいと通勤をどう示すか|辞退を減らす条件の書き方
新卒採用は育成前提の投資である。いま欠けている人手を埋める発想のままだと、求める人物像も、伝えるべき将来像も決まらない。
勤務地を県名で書かない
募集要項に勤務地を「福島県」とだけ書いている会社は多い。しかし学生にとって、これは情報として機能しない。郡山・いわき・福島のどこなのかで、通勤も住まいもまったく変わるからである。
市区町村まで書いたうえで、最寄り駅あるいは最寄りの幹線道路と、通勤手段の想定まで添える。ここまで書けば、条件の合わない学生は最初から応募してこない。それは損失ではなく、選考が効率化したということである。
配属の可能性がある拠点を全部出す
配属先をまとめて書くと、学生は最も遠い拠点を想定する。拠点ごとに挙げたほうが、結果的に不安は小さくなる。
郡山・いわき・福島・会津若松など、配属の可能性がある拠点を全部挙げたうえで、初年度の配属がどう決まるかを説明したい。決まっていないなら「決まっていない」と書くほうがよい。
ここで書いていることは、採用人数が年に1〜2名の会社と、10名以上採る会社とでは重みが変わる。自社の規模に合わせて、どこまでやるかを決めていただきたい。
住まいの支援は金額で書く
福島市周辺の家賃相場を会社側が示している例は少ない。相場と、自社の補助額を並べて書けば、実際にいくらで住めるのかが伝わる。これは金額の多寡以上に効く。
支援がない場合も、地域の家賃相場や、先輩社員がどのあたりに住んでいるかを示すだけで不安はかなり減る。情報を出すこと自体にコストはかからない。
車が必要かどうかを先に言う
福島県の企業では、通勤に車が必要なケースが珍しくない。免許の有無、車の購入が前提か、駐車場の有無、取得費用の支援があるか。ここは学生の負担に直結するので、選考の早い段階で伝えたい。
伏せて進めても、どこかで必ず判明する。そのときに失うのは応募者一人ではなく、会社への信頼のほうである。
募集要項に入れておきたい項目
住まいと通勤に関して、最低限ここまでは書いておきたい。
- 勤務地(市区町村まで。複数ある場合は全拠点)
- 初年度の配属がどう決まるか
- 転勤の有無、ある場合は頻度と範囲
- 通勤手段(車が必要か、公共交通で通えるか)
- 住宅支援の金額と条件、対象者
- 周辺の家賃相場の目安
福島県の採用を考えるときの基礎データ
福島県の主な産業は化学、電子部品、輸送用機械、再生可能エネルギーである。企業の集積は福島市といわきに偏りやすく、福島・会津若松に拠点を置く会社ほど、通勤と住まいの条件を先に示さないと比較の土俵に乗りにくい。
県内の主な高等教育機関としては福島大学、会津大学が挙げられる。学校経由の接点はここが起点になるが、それだけでは県外に進学した福島出身の学生には届かない。両者は別の対象として設計したい。
北海道・東北という括りで見ると、福島の企業が比較される相手は三つに分かれる。北海道・東北の同業、福島市に拠点を持つ企業、そして学生が進学先で接している都市部の企業である。どれと比べられているかで、出すべき条件が変わる。
よくある誤解
「まず採用サイトを作る」という順番も、実は後回しでよいことが多い。採用サイトは興味を持った学生が確認しに来る場所であって、認知を作る場所ではない。先に必要なのは、福島県の学生や福島出身者と接点を持つ手段のほうである。
「地元の学生は地元志向だから条件は多少劣ってもよい」という理解も危うい。地元で働きたいという前提の上で、条件は他社と比較されている。志向と妥協はまったく別のものである。
「Uターンは本人が決めることだから会社にできることはない」というのも早い。戻るかどうかの判断材料は、住まい・通勤・家族との距離といった仕事の外側にあり、そこは会社が提示できる。
自社に当てはめて考える
実行に移す前に、いまの状態を書き出しておきたい。書き出してみると、思っていたより決まっていないことが見つかる。
- 福島県のどの生活圏の学生を対象にするかが決まっているかどうか
- 募集要項に勤務地が市区町村まで書かれているかどうか
- 接点の経路ごとに昨年の実績人数を出せるかどうか
- 応募から一次面接までの日数が決まっているかどうか
一度埋めたら終わりではない。翌年の採用が始まる前にもう一度見直すと、前提が変わっている箇所が見つかる。
よくある質問
Q. オンラインでの選考だけで内定を出してもよいのでしょうか。
対面の機会をどこかに一度は入れたほうが、入社後のずれは減ります。ただし福島県の企業が県外の学生を対象にする場合、最初から対面を求めると接点そのものが作れません。序盤はオンラインで完結させ、終盤で一度来てもらう(交通費の扱いを先に明示する)という順番が現実的です。
Q. 内定を出しても辞退されます。
辞退は内定後ではなく選考の途中で決まっています。応募から一次面接までの日数、面接から結果連絡までの日数を決めて学生に先に伝え、その通りに動くだけでも志望度は変わります。あわせて、評価をしない面談(配属予定の部署の社員と話す時間)をどこかに入れておきたいところです。
Q. 社長が最終面接に出ますが、それで十分でしょうか。
経営者と直接話せることは中小企業の強みですが、最終面接だけに出ると「確認の場」になってしまいます。志望度は選考の前半で動くので、可能なら早い段階で一度顔を出すほうが効果は大きくなります。
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この記事のまとめ
打ち手を変えたら、変える前の状態を記録しておく。比較できる相手がいなければ、良くなったのか悪くなったのかも判断できない。
この記事は、株式会社エージェントベストが新卒採用の支援で得た知見をもとに構成した実務向けの解説です。特定の企業の事例や、年によって変動する統計値は扱っていません。制度・市況・各サービスの仕様は変わりますので、実際の判断にあたっては一次情報をご確認ください。
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