農業・林業・水産の新卒採用|地方の中小企業が押さえておく全体像
知名度で大手に勝てないことは、採用の前提として受け入れてよい。問題は、知名度がないこと自体ではなく、知名度がないまま同じ土俵で戦おうとしてしまうことにある。
農業・林業・水産の採用が難しくなる理由
農業・林業・水産は、地方において一定の雇用を支えている一方で、学生の第一志望に挙がりにくい。ここを前提にすると、やるべきことは露出を増やすことではなく、興味を持った学生に何を伝えるかを決めることになる。
事業としての規模と収益構造が学生に見えていないことが最大の障壁。法人経営であること、休日と給与が制度として整っていることを先に示す必要がある。
募集する職種ごとに市場が違う
農業・林業・水産の企業が新卒で募集する職種は、生産管理・営農指導・加工などに分かれる。同じ会社の募集でも、職種が違えば競合も、学生が比較する軸もまったく変わる。
ひとつの募集要項で全職種をまとめると、どの職種の学生にも刺さらない文章になる。手間はかかるが、職種ごとに分けたほうが結果的に応募は増える。
なお、制度やサービスの仕様は変わる。この記事の内容は考え方の部分を中心にしているが、具体的な手続きは必ず一次情報で確認してほしい。
地方企業としての条件を先に出す
勤務地、通勤手段、転勤の有無、住まいの支援。これらは業種を問わず学生が気にする条件だが、書かれていないことが多い。書かないと、終盤の辞退という形で跳ね返る。
不利に見える条件を先に出すと母数は減る。ただし減るのは、その条件で最終的に辞退したはずの層である。選考にかける時間を考えれば、先に出すほうが得になる。
優先順位のつけ方
農業・林業・水産の中小企業が手をつける順番としては、①募集要項を職種ごとに書き直す ②こちらから声をかける経路を作る ③選考のスピードを上げる、の順が効きやすい。どれも予算をかけずに着手できる。
新しい手法に手を出すのは、この3つをやり切ってからでよい。順番を逆にすると、土台のないまま露出だけが増えることになる。
農業・林業・水産で募集する職種を分けて考える
農業・林業・水産が新卒で募集する職種は、生産管理、営農指導、加工、販売などに分かれる。同じ会社の募集でも、職種が違えば競合も、学生が比較する軸も変わる。
たとえば生産管理と販売では、学生が見ている条件も、入社後に求められる資質も異なる。ひとつの募集要項にまとめると、どちらの層にも届かない文章になりやすい。
事業としての規模と収益構造が学生に見えていないことが最大の障壁。法人経営であること、休日と給与が制度として整っていることを先に示す必要がある。
よくある誤解
「農業・林業・水産は学生に人気がないから仕方ない」という前提を置くと、そこから先の打ち手が出てこない。業種のイメージで足切りされているなら、業種名より先に仕事の中身を見せる順番に変えるだけで、読まれ方は変わる。
「条件を良くすれば採れる」という考え方も、思ったほど当たらない。初任給は応募するかどうかの入口では強く効くが、入社を決める段階では決め手にならないことが多い。入口で足切りされない水準を確保したうえで、決め手は別に用意する設計になる。
「大手と同じ選考フローにしておけば安心」という考え方も見直したい。選考が長いこと自体が辞退の理由になる。回数を減らすのではなく、各段階で何を判断するかを決めることで、自然と適正な長さになる。
自社に当てはめて考える
実行に移す前に、いまの状態を書き出しておきたい。書き出してみると、思っていたより決まっていないことが見つかる。
- 農業・林業・水産で募集する職種ごとに、募集要項が分かれているかどうか
- 入社1年目と3年目に任せる範囲が書かれているかどうか
- 勤務地と通勤手段が具体的に書かれているかどうか
- 選考の流れと所要日数を学生に先に伝えているかどうか
項目を埋めた結果は記録に残しておく。翌年の担当者が同じところから考え直さずに済むのは、この記録があるかどうかで決まる。
よくある質問
Q. 業種名だけで敬遠されている感じがします。
農業・林業・水産という括りで判断されると、仕事の中身が見られる前に候補から外れます。募集要項の冒頭を業種の説明ではなく仕事の説明から始める、スカウトの文面で業種名を先頭に置かない、といった順番の入れ替えだけでも読まれ方が変わります。
Q. インターンをやるべきでしょうか。
目的が決まっているならやる価値があります。認知を広げるためなのか、こちらが見極めるためなのかで、内容も期間も変わります。決めないまま始めると職場見学の域を出ず、工数だけがかかります。
Q. 未経験でも採れる仕事かどうか、どう伝えればいいですか。
入社後1年目に任せる範囲と、そこに至るまでの教育の流れを書くのが分かりやすい形です。「未経験歓迎」という言葉だけでは、何をどこまで教えてもらえるのかが伝わりません。
あわせて読みたい
- 食品・飲料|地方に本社を置く企業が多く、地元での知名度は高いのに学生には「工場の仕事」としか見えていないことが多い。
- 電力・ガス・インフラ|安定というキーワードだけで語ると、同じ土俵の企業と区別がつかなくなる。
- 士業・コンサルティング|資格取得支援と、未経験からの育成計画をどこまで具体化できるかで応募が決まる。
- 選考フローの設計|選考が長い会社は、それだけで辞退される。
- 採用代行(RPO)|RPOは丸投げの仕組みではない。
- 応募者管理と選考の可視化|高機能なツールを入れる前に、いま誰がどの段階にいるかを一枚で見られる状態を作るほうが先。
この記事のまとめ
ここまでの内容は、どれも一度決めれば終わりというものではない。毎年の採用のなかで結果を見ながら調整していく前提で、まずは仮でよいので決め切ることをすすめたい。
この記事は、株式会社エージェントベストが新卒採用の支援で得た知見をもとに構成した実務向けの解説です。特定の企業の事例や、年によって変動する統計値は扱っていません。制度・市況・各サービスの仕様は変わりますので、実際の判断にあたっては一次情報をご確認ください。
株式会社エージェントベスト/有料職業紹介事業 許可番号 13-ユ-316964