地方拠点で観光・宿泊の新卒を採る|勤務地の伝え方
採用がうまくいかない会社の多くは、母集団が足りないのではなく、届けたい相手に情報が届いていない。掲載して待つ設計のままでは、この距離は縮まらない。
勤務地は県名で書かない
勤務地を都道府県名だけで書くと、学生は自分の毎日を想像できない。市区町村、最寄り駅または幹線道路、通勤手段の想定まで書きたい。
繁閑差と勤務形態を正直に書いたほうが、入社後のミスマッチは確実に減る。地域の観光そのものに関わりたい学生は一定数いるので、事業の広がりを示したい。
配属の可能性がある拠点を全部出す
観光・宿泊の企業は複数拠点を持つことが多い。「本社または各事業所」という書き方は、終盤で辞退される原因になる。
配属の可能性がある拠点を全部挙げ、初年度の配属がどう決まるかを説明する。決まっていないなら「決まっていない」と書くほうがよい。
ここで書いていることは、採用人数が年に1〜2名の会社と、10名以上採る会社とでは重みが変わる。自社の規模に合わせて、どこまでやるかを決めていただきたい。
住まいと通勤を金額で示す
遠方から来る学生は、まず住む場所を気にする。社宅・寮・補助・引越費用のいずれかがあるなら、金額と条件まで書いておきたい。
通勤に車が要るかどうかは、学生の負担に直結する。免許、購入の要否、駐車場、費用の支援まで先に示しておきたい。
地方勤務を不利と決めつけない
通勤時間の短さと住居費の低さは、都市部の企業が給与で追いつけない領域である。ただし「暮らしやすい」では伝わらない。
数字に置き換えて初めて比較できる。所要時間、家賃、休日の過ごし方。この3つを具体で書きたい。
観光・宿泊で募集する職種を分けて考える
観光・宿泊が新卒で募集する職種は、フロント、企画、営業、施設運営などに分かれる。同じ会社の募集でも、職種が違えば競合も、学生が比較する軸も変わる。
たとえばフロントと施設運営では、学生が見ている条件も、入社後に求められる資質も異なる。ひとつの募集要項にまとめると、どちらの層にも届かない文章になりやすい。
繁閑差と勤務形態を正直に書いたほうが、入社後のミスマッチは確実に減る。地域の観光そのものに関わりたい学生は一定数いるので、事業の広がりを示したい。
よくある誤解
「観光・宿泊は学生に人気がないから仕方ない」という前提を置くと、そこから先の打ち手が出てこない。業種のイメージで足切りされているなら、業種名より先に仕事の中身を見せる順番に変えるだけで、読まれ方は変わる。
「若手が定着しないのは世代の問題」という説明は、原因の特定を止めてしまう。採用時に伝えた情報と実際の仕事にずれがなかったかを確認するほうが、次の打ち手につながる。
「観光・宿泊の仕事は入ってみないと分からない」という説明は、聞く側からすると判断を放棄されたように映る。一日の流れと、最初の1年で任せる範囲だけでも書いておきたい。
自社に当てはめて考える
記事の内容をそのまま持ち込む必要はない。自社の条件に照らして、次の項目のうちどれが欠けているかを確認するところから始めたい。
- 観光・宿泊で募集する職種ごとに、募集要項が分かれているかどうか
- 入社1年目と3年目に任せる範囲が書かれているかどうか
- 勤務地と通勤手段が具体的に書かれているかどうか
- 選考の流れと所要日数を学生に先に伝えているかどうか
項目を埋めた結果は記録に残しておく。翌年の担当者が同じところから考え直さずに済むのは、この記録があるかどうかで決まる。
よくある質問
Q. 早期離職が続いています。
受け入れ側の問題として扱う前に、採用時に伝えた情報と実際の仕事にずれがなかったかを確認したいところです。良いことしか伝えていない採用は、必ず入社後に跳ね返ります。
Q. 配属先を約束してもよいのでしょうか。
約束できるなら、それは強い訴求になります。約束できないなら「どう決まるか」を説明するだけでも不安はかなり減ります。曖昧にしたまま進めると、終盤で辞退の理由になります。
Q. 社員の写真や声は必要でしょうか。
写真そのものより、何をしている人かが分かることが重要です。入社1〜3年目の社員が、どんな一日を過ごしているかを職種ごとに1件ずつ用意できると、それだけで比較の材料になります。
あわせて読みたい
- 建設・土木|資格取得の支援と、休日・残業の実態をどこまで正直に書けるかが応募の分かれ目になる。
- 卸売・商社|扱う商材が学生に伝わりにくく、「何をしている会社か分からない」で終わりやすい。
- 農業・林業・水産|事業としての規模と収益構造が学生に見えていないことが最大の障壁。
- 通年採用・秋採用|春に採り切れなかった枠を秋以降で埋める会社は増えている。
- 女性の採用・定着|制度の有無より、実際に働き続けている先輩がいるかどうかが見られている。
- スカウトテンプレートの運用|テンプレートは手を抜くためではなく、毎回の判断を減らして個別化に時間を使うために作る。
この記事のまとめ
採用の設計は、一度作ったら終わりではない。毎年の結果を見て、どこを変えてどこを変えないかを決める作業そのものが設計である。
この記事は、株式会社エージェントベストが新卒採用の支援で得た知見をもとに構成した実務向けの解説です。特定の企業の事例や、年によって変動する統計値は扱っていません。制度・市況・各サービスの仕様は変わりますので、実際の判断にあたっては一次情報をご確認ください。
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