観光・宿泊のスカウト文面|業種で敬遠されないための書き方
新卒採用は育成前提の投資である。いま欠けている人手を埋める発想のままだと、求める人物像も、伝えるべき将来像も決まらない。
冒頭で業種名を出さない
スカウトの冒頭に観光・宿泊と書くと、その業種に興味のない学生はそこで読むのをやめる。先に書くべきは、なぜその学生に送ったかである。
プロフィールの具体的な語句を引用すると、定型文でないことが伝わる。ゼミの研究テーマ、力を入れたこと、希望する働き方。一つでよい。
仕事の中身から入る
フロントや企画という職種名も、単体では意味が伝わらない。誰に対して、何を使って、何をする仕事なのかを一文で書きたい。
繁閑差と勤務形態を正直に書いたほうが、入社後のミスマッチは確実に減る。地域の観光そのものに関わりたい学生は一定数いるので、事業の広がりを示したい。
なお、ここで挙げた順番が唯一の正解ではない。すでに手をつけている部分があるなら、そこは飛ばして次に進んでいただきたい。
地方勤務であることの書き方
勤務地は隠さずに書く。隠して面談まで進んでも、そこで辞退されるだけである。先に書けば対象は絞られるが、残った学生の歩留まりは上がる。
3点をまとめて示すのがこつである。どこで働き、どう通い、住まいはどうなるのか。並べて書けば、不利な条件も検討材料になる。
次の行動を一つに絞る
文面の最後で求める行動は一つにする。複数並べると、どれも実行されない。新卒であれば「15分のオンライン面談」程度の軽さが扱いやすい。
日程調整の往復は返信率を下げる。候補日を提示するか、予約用のURLを添えて、やりとりの回数を減らしておきたい。
観光・宿泊で募集する職種を分けて考える
観光・宿泊が新卒で募集する職種は、フロント、企画、営業、施設運営などに分かれる。同じ会社の募集でも、職種が違えば競合も、学生が比較する軸も変わる。
たとえばフロントと施設運営では、学生が見ている条件も、入社後に求められる資質も異なる。ひとつの募集要項にまとめると、どちらの層にも届かない文章になりやすい。
繁閑差と勤務形態を正直に書いたほうが、入社後のミスマッチは確実に減る。地域の観光そのものに関わりたい学生は一定数いるので、事業の広がりを示したい。
よくある誤解
「大手と同じ選考フローにしておけば安心」という考え方も見直したい。選考が長いこと自体が辞退の理由になる。回数を減らすのではなく、各段階で何を判断するかを決めることで、自然と適正な長さになる。
「観光・宿泊の仕事は入ってみないと分からない」という説明は、聞く側からすると判断を放棄されたように映る。一日の流れと、最初の1年で任せる範囲だけでも書いておきたい。
「内定を出せば終わり」という感覚も危うい。内定から入社までの数か月は学生がいちばん不安になる時期で、放置すれば他社に流れる。
自社に当てはめて考える
ここまでの内容を自社に当てはめるとき、確認しておきたいのは次の点である。答えられない項目が、そのまま次に手をつける場所になる。
- 観光・宿泊で募集する職種ごとに、募集要項が分かれているかどうか
- 入社1年目と3年目に任せる範囲が書かれているかどうか
- 勤務地と通勤手段が具体的に書かれているかどうか
- 選考の流れと所要日数を学生に先に伝えているかどうか
一度埋めたら終わりではない。翌年の採用が始まる前にもう一度見直すと、前提が変わっている箇所が見つかる。
よくある質問
Q. 同業他社と条件で横並びになってしまいます。
条件で並ぶなら、任される範囲で差をつけるしかありません。入社1年目に何を任せるか、3年目に何を任せるかを具体的に書けると、同じ条件でも見え方が変わります。規模が小さいほど、この部分は書きやすいはずです。
Q. 採用サイトを作るべきでしょうか。
作る前に、載せる中身が揃っているかを確認したいところです。仕事内容・条件・選考の流れ・社員の実例。この4つがあれば形式は問われません。逆に、中身のないサイトを作ると、接点を持った学生の志望度を下げる側に働きます。
Q. 技術職と事務職で、採用の進め方は変えるべきですか。
変えたほうがよいです。フロントと企画では、学生が比較する相手も、判断の軸も違います。募集要項・接点の作り方・面接で見る項目を、職種ごとに分けて設計したいところです。
あわせて読みたい
- 建設・土木|資格取得の支援と、休日・残業の実態をどこまで正直に書けるかが応募の分かれ目になる。
- 食品・飲料|地方に本社を置く企業が多く、地元での知名度は高いのに学生には「工場の仕事」としか見えていないことが多い。
- 教育・保育|志望度の高い学生が集まりやすい一方、待遇面で他業種と比較された瞬間に離れる。
- 母集団形成|母集団は「多く集める」ものではなく「対象を決めてから集める」もの。
- 採用単価・コスト|単価は媒体費だけでは測れない。
- 採用代行(RPO)|RPOは丸投げの仕組みではない。
この記事のまとめ
最後に残るのは、学生に対して正直だったかどうかである。伝えにくいことを先に伝えた会社は、採用人数が少なくても入社後に崩れにくい。
この記事は、株式会社エージェントベストが新卒採用の支援で得た知見をもとに構成した実務向けの解説です。特定の企業の事例や、年によって変動する統計値は扱っていません。制度・市況・各サービスの仕様は変わりますので、実際の判断にあたっては一次情報をご確認ください。
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