IT・情報通信の内定辞退を減らす|どの段階で志望度が落ちているか
新卒採用は育成前提の投資である。いま欠けている人手を埋める発想のままだと、求める人物像も、伝えるべき将来像も決まらない。
辞退は選考の途中で決まっている
辞退の連絡が来た時点で、学生の気持ちはとうに離れている。志望度が下がったのは選考の途中であり、内定後のフォローを厚くしてもあまり効かない。
手を打つべきは、初回接触から一次面接までの間である。ここで志望度が動かなければ、その後どれだけ丁寧に扱っても順位は変わらない。
段階ごとに分けて数える
段階ごとの残存人数を並べてみたい。合計の辞退率だけでは、原因がどこにあるかまでは見えてこない。
序盤で落ちるなら情報提供、中盤なら仕事内容の伝わり方、終盤なら条件と意思決定の問題であることが多い。
なお、制度やサービスの仕様は変わる。この記事の内容は考え方の部分を中心にしているが、具体的な手続きは必ず一次情報で確認してほしい。
IT・情報通信でとくに起きやすいずれ
地方でも東京の企業と直接比較される数少ない業種。開発環境・扱う技術・リモートの可否という具体で語らないと、給与だけの比較になってしまう。
エンジニア・社内SE・Webディレクターのうちどの職種に配属されるかが決まっていないまま進めると、終盤で「思っていた仕事と違う」が出る。配属の決め方を先に説明しておきたい。
見極めと口説きを分ける
評価する面接と、口説く面談を同じ場でやると、どちらも中途半端になる。配属予定の部署の社員と話す時間を、選考とは別に設けたい。
職場を見てもらう機会があるなら必ず入れる。遠方の学生にはオンラインで現場を映すだけでも効果がある。
IT・情報通信で募集する職種を分けて考える
IT・情報通信が新卒で募集する職種は、エンジニア、社内SE、Webディレクター、営業などに分かれる。同じ会社の募集でも、職種が違えば競合も、学生が比較する軸も変わる。
たとえばエンジニアと営業では、学生が見ている条件も、入社後に求められる資質も異なる。ひとつの募集要項にまとめると、どちらの層にも届かない文章になりやすい。
地方でも東京の企業と直接比較される数少ない業種。開発環境・扱う技術・リモートの可否という具体で語らないと、給与だけの比較になってしまう。
よくある誤解
「若手が定着しないのは世代の問題」という説明は、原因の特定を止めてしまう。採用時に伝えた情報と実際の仕事にずれがなかったかを確認するほうが、次の打ち手につながる。
「大手と同じ選考フローにしておけば安心」という考え方も見直したい。選考が長いこと自体が辞退の理由になる。回数を減らすのではなく、各段階で何を判断するかを決めることで、自然と適正な長さになる。
「求人票は法務的に問題がなければよい」という扱いをしている会社は多い。読んで応募するかどうかを決める文書なので、条件の羅列で終わらせると比較の土俵に乗らない。
自社に当てはめて考える
記事の内容をそのまま持ち込む必要はない。自社の条件に照らして、次の項目のうちどれが欠けているかを確認するところから始めたい。
- IT・情報通信で募集する職種ごとに、募集要項が分かれているかどうか
- 入社1年目と3年目に任せる範囲が書かれているかどうか
- 勤務地と通勤手段が具体的に書かれているかどうか
- 選考の流れと所要日数を学生に先に伝えているかどうか
埋まっていない項目が多いときほど、全部を一度に片づけたくなる。しかし同時に動かすと、どれが効いたのか分からなくなる。一つずつ変えたい。
よくある質問
Q. 同業他社と条件で横並びになってしまいます。
条件で並ぶなら、任される範囲で差をつけるしかありません。入社1年目に何を任せるか、3年目に何を任せるかを具体的に書けると、同じ条件でも見え方が変わります。規模が小さいほど、この部分は書きやすいはずです。
Q. 技術職と事務職で、採用の進め方は変えるべきですか。
変えたほうがよいです。エンジニアと社内SEでは、学生が比較する相手も、判断の軸も違います。募集要項・接点の作り方・面接で見る項目を、職種ごとに分けて設計したいところです。
Q. 未経験でも採れる仕事かどうか、どう伝えればいいですか。
入社後1年目に任せる範囲と、そこに至るまでの教育の流れを書くのが分かりやすい形です。「未経験歓迎」という言葉だけでは、何をどこまで教えてもらえるのかが伝わりません。
あわせて読みたい
- 建設・土木|資格取得の支援と、休日・残業の実態をどこまで正直に書けるかが応募の分かれ目になる。
- 教育・保育|志望度の高い学生が集まりやすい一方、待遇面で他業種と比較された瞬間に離れる。
- 飲食・フードサービス|離職率のイメージが先行するため、労働時間と昇進の道筋を数字と制度で説明できるかが勝負になる。
- 内定辞退の防止|辞退は内定を出した後に始まるのではなく、選考の途中で決まっている。
- 内定者フォロー|内定から入社までの期間は、学生がいちばん不安になる時期。
- スカウト文面|文面は長さではなく、なぜあなたなのかが最初の3行に書いてあるかで読まれるかどうかが決まる。
この記事のまとめ
最後に残るのは、学生に対して正直だったかどうかである。伝えにくいことを先に伝えた会社は、採用人数が少なくても入社後に崩れにくい。
この記事は、株式会社エージェントベストが新卒採用の支援で得た知見をもとに構成した実務向けの解説です。特定の企業の事例や、年によって変動する統計値は扱っていません。制度・市況・各サービスの仕様は変わりますので、実際の判断にあたっては一次情報をご確認ください。
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