埼玉県の中小企業が大手と戦わずに新卒を採る方法
求人を出せば応募が来た時代の設計のまま、媒体だけを増やしている会社は多い。工数は増えるのに結果が変わらないのは、やり方ではなく前提が古いためである。
同じ土俵に乗った時点で負けている
採用がうまくいかない理由を「知名度がないから」で終わらせてしまうと、そこから先の打ち手が出てこない。知名度がないことは変えられないが、知名度が効かない場所で戦うことは選べる。
戦い方を変えるとは、目新しい施策を打つという意味ではない。どこで学生と出会うか、出会ってから何を先に話すか。その二つを入れ替えるだけの、きわめて地味な作業である。
出会う場所を変える
待って集める手法では、埼玉県の中小企業に学生が集まる理由がない。こちらから個別に声をかける手法、いわゆるダイレクトリクルーティングに切り替えると、知名度の差はかなり薄まる。学生にとっては「自分に声をかけてきた会社」という一点で、他社と並ばない状態が作れるからである。
合同説明会や求人媒体を切る必要はない。ただし、そこは「すでに知っている人が訪ねてくる場所」であって、知らない人と出会う場所ではない。位置づけを変えて使えばよい。
ここでの話は、あくまで判断の材料である。最終的にどうするかは、自社が確保できる人手と予算のなかで決めることになる。
伝える順番を変える
会社案内の順番をそのまま説明に使うと、冒頭が沿革と業績になる。そこは比較で勝てない領域なので、最初に出すべきは入社後に何をするかという具体である。
埼玉県の会社であれば、「入社1年目の社員が実際に何をしているか」を職種ごとに一つずつ書き出すところから始めるとよい。抽象的な社風の説明より、この具体のほうが学生の記憶に残る。
暮らしの条件を武器にする
さいたま市やその周辺で働く場合の通勤時間と家賃の目安を、募集要項に具体的な数字で書いている会社は少ない。書けば、それだけで比較の軸を一つ増やしたことになる。
抽象的な言い方では届かない。さいたま市まで何分、家賃はいくら、車は要るのか。数字に置き換えられる情報だけが、学生の比較表に載る。
意思決定の速さは、選考で見せられる
決めるのが速いという特徴は、口にした瞬間に他社と同じ主張になる。実際の選考スピードで示すほうが、学生の記憶には確実に残る。
日数を先に宣言し、そのとおりに連絡する。やっていることは単純だが、守られた約束の数だけ信用は積み上がる。規模の大きい会社ほど、ここは真似しにくい。
埼玉県の採用を考えるときの基礎データ
埼玉県の主な産業は物流、食品、機械、サービスである。企業の集積はさいたま市と川口に偏りやすく、川越・所沢に拠点を置く会社ほど、通勤と住まいの条件を先に示さないと比較の土俵に乗りにくい。
県内の主な高等教育機関としては埼玉大学、芝浦工業大学(大宮)が挙げられる。学校経由の接点はここが起点になるが、それだけでは県外に進学した埼玉出身の学生には届かない。両者は別の対象として設計したい。
関東という括りで見ると、埼玉の企業が比較される相手は三つに分かれる。関東の同業、さいたま市に拠点を持つ企業、そして学生が進学先で接している都市部の企業である。どれと比べられているかで、出すべき条件が変わる。
よくある誤解
「知名度がないから採用できない」という説明も、そこで止めると打ち手が出てこない。知らない会社であることは、個別に声をかければ解消できる。問題は、知った後に志望度が上がる材料が用意されていないことのほうである。
「学生は都会に出たがる」と決めつけるのも危うい。埼玉県での勤務を希望している学生は実際に存在するが、その層は地元の説明会にも求人媒体にも接していないことが多い。見つけられないことと、いないことは別である。
「合同説明会に出れば知ってもらえる」という期待も、実際には裏切られやすい。ブースに座って待つ形では、知名度のある企業に人が流れる。出展するなら、事前の告知と事後の個別連絡まで含めて設計しないと投資が回収できない。
自社に当てはめて考える
ここまでの内容を自社に当てはめるとき、確認しておきたいのは次の点である。答えられない項目が、そのまま次に手をつける場所になる。
- 埼玉県のどの生活圏の学生を対象にするかが決まっているかどうか
- 募集要項に勤務地が市区町村まで書かれているかどうか
- 接点の経路ごとに昨年の実績人数を出せるかどうか
- 応募から一次面接までの日数が決まっているかどうか
埋まっていない項目が多いときほど、全部を一度に片づけたくなる。しかし同時に動かすと、どれが効いたのか分からなくなる。一つずつ変えたい。
よくある質問
Q. 大手と初任給で比べられると勝てません。
額面での比較に持ち込まれると、多くの中小企業は不利になります。埼玉県で働く場合の家賃や通勤にかかる費用を並べて示すと、手元に残る額での比較という別の土俵が作れます。ただしこの計算を学生が自分ですることはないので、会社側が数字を用意する必要があります。
Q. 学生から見た自社の魅力が分かりません。
社内で当たり前になっていることほど、外から見ると特徴になります。物流や食品に関わる仕事であれば、自社の製品やサービスが最終的に誰の手に届いているかを説明できるだけでも、学生の見方は変わります。社員に「この仕事で面白いと思った瞬間」を聞くところから始めるのが早道です。
Q. 学校のキャリアセンターに行っても相手にされません。
キャリアセンターは、送り出した学生がどうなるかに責任を感じています。実績のない会社の求人をいきなり前に出すことはしません。求人票ではなく「どんな仕事を、どんな学生に任せたいか」を説明する資料を持って、複数年かけて関係を作る前提で臨みたいところです。
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この記事のまとめ
打ち手を変えたら、変える前の状態を記録しておく。比較できる相手がいなければ、良くなったのか悪くなったのかも判断できない。
この記事は、株式会社エージェントベストが新卒採用の支援で得た知見をもとに構成した実務向けの解説です。特定の企業の事例や、年によって変動する統計値は扱っていません。制度・市況・各サービスの仕様は変わりますので、実際の判断にあたっては一次情報をご確認ください。
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