熊本県の中小企業が大手と戦わずに新卒を採る方法
応募が来ないという相談の大半は、露出の量ではなく対象の設定に原因がある。誰に向けた募集なのかが決まっていないと、どれだけ露出を増やしても素通りされる。
同じ土俵に乗った時点で負けている
採用がうまくいかない理由を「知名度がないから」で終わらせてしまうと、そこから先の打ち手が出てこない。知名度がないことは変えられないが、知名度が効かない場所で戦うことは選べる。
戦い方を変えるとは、目新しい施策を打つという意味ではない。どこで学生と出会うか、出会ってから何を先に話すか。その二つを入れ替えるだけの、きわめて地味な作業である。
出会う場所を変える
スカウト型のサービスを使うと、学生のプロフィールを見てから声をかけられる。熊本県の企業にとって重要なのは、県内在住かどうかではなく、熊本に縁のある学生を県外からも探せるという点である。待つ採用では、この層には一生届かない。
既存の手法をやめろという話ではない。媒体やイベントは受け皿として残しつつ、認知を作る役割は別の手段に持たせる、という分担にしたい。
ただし、これは一般的な傾向であって、自社の業種・地域・過去の採用実績によって最適解は変わる。数字を持っている会社は、必ず自社の実績を優先して判断してほしい。
伝える順番を変える
大手と同じ順番で会社を説明すると、規模・売上・シェアという比較されると必ず負ける項目から話し始めることになる。中小企業は、任される仕事の具体から入ったほうがよい。
説明の順番は、①何をしている会社か ②入社して最初に任されること ③3年後にどうなっているか ④暮らしの条件、の順が伝わりやすい。会社の歴史や理念は、この後で初めて意味を持つ。
暮らしの条件を武器にする
熊本市やその周辺で働く場合の通勤時間と家賃の目安を、募集要項に具体的な数字で書いている会社は少ない。書けば、それだけで比較の軸を一つ増やしたことになる。
ただし「自然が豊か」「暮らしやすい」といった言い方では伝わらない。通勤何分、家賃いくら、休日に何ができるか、というところまで落として初めて判断材料になる。
意思決定の速さは、選考で見せられる
中小企業の強みとしてよく挙がる意思決定の速さは、口で言っても伝わらない。選考のスピードそのもので見せるのがいちばん早い。
応募から一次面接までと、面接から結果連絡までの日数を決め、それを学生に先に伝える。宣言どおりに動けば、それだけで「この会社は速い」という実感が残る。大手には出しにくい差になる。
熊本県の採用を考えるときの基礎データ
熊本県の主な産業は半導体・電子部品、農業、食品、輸送用機械である。企業の集積は熊本市と八代に偏りやすく、菊池・合志に拠点を置く会社ほど、通勤と住まいの条件を先に示さないと比較の土俵に乗りにくい。
県内の主な高等教育機関としては熊本大学、熊本県立大学が挙げられる。学校経由の接点はここが起点になるが、それだけでは県外に進学した熊本出身の学生には届かない。両者は別の対象として設計したい。
九州・沖縄という括りで見ると、熊本の企業が比較される相手は三つに分かれる。九州・沖縄の同業、熊本市に拠点を持つ企業、そして学生が進学先で接している都市部の企業である。どれと比べられているかで、出すべき条件が変わる。
よくある誤解
「まず露出を増やす」という発想も、順番として逆になりやすい。誰に向けた募集なのかが決まっていない状態で露出だけを増やすと、応募の対応に担当者の時間が奪われ、本当に採りたい層に時間を使えなくなる。
「学生は都会に出たがる」と決めつけるのも危うい。熊本県での勤務を希望している学生は実際に存在するが、その層は地元の説明会にも求人媒体にも接していないことが多い。見つけられないことと、いないことは別である。
「まず採用サイトを作る」という順番も、実は後回しでよいことが多い。採用サイトは興味を持った学生が確認しに来る場所であって、認知を作る場所ではない。先に必要なのは、熊本県の学生や熊本出身者と接点を持つ手段のほうである。
自社に当てはめて考える
次の項目は、採用担当だけでは答えられないものを含んでいる。配属先の上長と一緒に確認するほうが早く埋まる。
- 熊本県のどの生活圏の学生を対象にするかが決まっているかどうか
- 募集要項に勤務地が市区町村まで書かれているかどうか
- 接点の経路ごとに昨年の実績人数を出せるかどうか
- 応募から一次面接までの日数が決まっているかどうか
確認した内容は、配属先の上長にも共有しておきたい。採用担当だけが把握している状態だと、判断が必要になったときに止まる。
よくある質問
Q. 県内の学生だけでは母集団が足りません。どうすればいいですか。
熊本県に限らず、県内在住の学生だけで計画を埋めようとすると早い段階で頭打ちになります。進学で県外に出た熊本出身の学生を対象に含めると、母数は大きく変わります。ただしこの層は地元の説明会にも求人媒体にも接していないため、こちらから探しに行ける手段がないと接点が作れません。
Q. 求人媒体への掲載はやめるべきですか。
やめる必要はありませんが、位置づけは変えたいところです。媒体は「知っている人が来る場所」であり、知らない人と出会う場所ではありません。認知を作る手段を別に持ったうえで、受け皿として使うのが噛み合います。
Q. 学校のキャリアセンターに行っても相手にされません。
キャリアセンターは、送り出した学生がどうなるかに責任を感じています。実績のない会社の求人をいきなり前に出すことはしません。求人票ではなく「どんな仕事を、どんな学生に任せたいか」を説明する資料を持って、複数年かけて関係を作る前提で臨みたいところです。
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この記事のまとめ
一年で結果が出なくても、積み上げたものが消えるわけではない。学校との関係も、社内の言語化も、翌年の起点として残る。
この記事は、株式会社エージェントベストが新卒採用の支援で得た知見をもとに構成した実務向けの解説です。特定の企業の事例や、年によって変動する統計値は扱っていません。制度・市況・各サービスの仕様は変わりますので、実際の判断にあたっては一次情報をご確認ください。
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