福井県の新卒初任給と待遇設計|金額だけで比較されないために
採用がうまくいっている会社が特別なことをしているとは限らない。社内では当たり前になっていることを、外から見て分かる言葉に直せているかどうかの差であることが多い。
初任給は比較される前提で設計する
初任給の金額は、応募するかどうかの入口では強く効き、入社を決める段階では思ったより効かない。この性質を踏まえると、入口で足切りされない水準を確保したうえで、決め手は別に用意するという設計になる。
重要なのは、自社の金額が地域の相場に対してどの位置にあるかを把握しておくことである。分からないまま決めていると、知らないうちに足切りされている。
額面ではなく手取りと生活コストで語る
福井市周辺の家賃相場、通勤にかかる時間と費用、車が必要かどうか。この3点を金額として出すだけで、額面の比較とは別の土俵が作れる。
生活コストを持ち出すときは、都市部を下げる書き方をしないほうがよい。事実を並べて判断は学生に委ねたほうが、結果的に信用される。
なお、他社がやっているという理由だけで手法を増やすのは避けたい。工数が分散し、どれも中途半端になるほうが採用にとっては痛手になる。
昇給の考え方まで書く
学生が本当に知りたいのは初任給ではなく、3年後・5年後にどうなっているかである。ところが多くの募集要項は初任給で止まり、その先が書かれていない。
等級や評価制度が整っていない会社もあるが、それ自体は問題ではない。「まだ制度化していないが、こういう考え方で決めている」と正直に書くほうが、曖昧な表現でごまかすより信用される。
手当は金額と条件をセットで
手当は「あり」とだけ書くと、金額が小さいと受け取られる。月額いくら、誰が対象、いつまで支給されるか。この3点まで書いて初めて判断材料になる。
制度があるのに使われていない手当は、書いてもすぐ見抜かれる。利用している社員が何人いるかまで言えるかどうかを、社内で確認しておきたい。
見直しの順番
待遇を全部いっぺんに変えることはできない。優先順位をつけるなら、次の順番が現実的である。
- 入口で足切りされない初任給の水準を確保する
- 住まいに関する支援(金額と条件)を明示する
- 昇給の考え方を言語化して募集要項に載せる
- 入社3年目の実例を、職種ごとに1件ずつ用意する
福井県の採用を考えるときの基礎データ
福井県の主な産業は繊維、眼鏡、電子部品、機械である。企業の集積は福井市と敦賀に偏りやすく、鯖江・越前に拠点を置く会社ほど、通勤と住まいの条件を先に示さないと比較の土俵に乗りにくい。
県内の主な高等教育機関としては福井大学、福井県立大学が挙げられる。学校経由の接点はここが起点になるが、それだけでは県外に進学した福井出身の学生には届かない。両者は別の対象として設計したい。
甲信越・北陸という括りで見ると、福井の企業が比較される相手は三つに分かれる。甲信越・北陸の同業、福井市に拠点を持つ企業、そして学生が進学先で接している都市部の企業である。どれと比べられているかで、出すべき条件が変わる。
よくある誤解
「知名度がないから採用できない」という説明も、そこで止めると打ち手が出てこない。知らない会社であることは、個別に声をかければ解消できる。問題は、知った後に志望度が上がる材料が用意されていないことのほうである。
「採用は人事の仕事」という切り分けも、中小企業では機能しにくい。配属先の上長が何を任せたいかを言語化していないと、求める人物像も決まらず、面接での判断もぶれる。
「選考は丁寧にやるほどよい」というのも一面的である。回数が多く期間が長い選考は、それ自体が辞退の理由になる。各段階で何を判断するかを決めれば、回数は自然と適正になる。
自社に当てはめて考える
ここからは自社の話になる。社内で答えが揃わない項目があれば、そこが手をつける場所だと考えてよい。
- 福井県のどの生活圏の学生を対象にするかが決まっているかどうか
- 募集要項に勤務地が市区町村まで書かれているかどうか
- 接点の経路ごとに昨年の実績人数を出せるかどうか
- 応募から一次面接までの日数が決まっているかどうか
確認した内容は、配属先の上長にも共有しておきたい。採用担当だけが把握している状態だと、判断が必要になったときに止まる。
よくある質問
Q. 何月から動き出せばいいですか。
入社時期から逆算して、内定を出したい時期、選考を始める時期、接点を作り始める時期を置いていくのが基本です。大手と同じ時期に並ぶと比較で不利になるため、前倒しするか、逆に夏以降に動く層を狙うか、意図を持って時期をずらしたいところです。
Q. 内定を出しても辞退されます。
辞退は内定後ではなく選考の途中で決まっています。応募から一次面接までの日数、面接から結果連絡までの日数を決めて学生に先に伝え、その通りに動くだけでも志望度は変わります。あわせて、評価をしない面談(配属予定の部署の社員と話す時間)をどこかに入れておきたいところです。
Q. 学校のキャリアセンターに行っても相手にされません。
キャリアセンターは、送り出した学生がどうなるかに責任を感じています。実績のない会社の求人をいきなり前に出すことはしません。求人票ではなく「どんな仕事を、どんな学生に任せたいか」を説明する資料を持って、複数年かけて関係を作る前提で臨みたいところです。
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この記事のまとめ
採用は担当者の努力だけで決まる仕事ではない。経営の意思決定と現場の協力が要る以上、社内で共有できる形に書き出しておくことが先決になる。
この記事は、株式会社エージェントベストが新卒採用の支援で得た知見をもとに構成した実務向けの解説です。特定の企業の事例や、年によって変動する統計値は扱っていません。制度・市況・各サービスの仕様は変わりますので、実際の判断にあたっては一次情報をご確認ください。
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