初任給・給与設計|うまくいかない原因を切り分ける
採用の相談を受けると、多くの会社が手法の話から始める。ところが実際に効くのは、誰に向けて何を伝えるかを決め直すという、手法より前の段階であることが多い。
原因を一つに決めつけない
初任給・給与設計がうまくいかないとき、目立つ症状に飛びついて手を打つと外すことが多い。症状と原因は別の場所にあるのが普通である。
初任給は相場との比較で見られるが、学生が本当に気にしているのは3年後の見通し。昇給の考え方まで示せると比較の土俵が変わる。
切り分けの順番
原因の候補は、設計・実行・体制の3つに分けると整理しやすい。設計が間違っているのか、設計は正しいが実行できていないのか、実行する人手がないのか。
地域の相場に対する自社の位置を把握しているかどうかという点が満たされていないなら設計の問題、満たされているのに結果が出ていないなら実行か体制の問題である。
なお、ここで挙げた順番が唯一の正解ではない。すでに手をつけている部分があるなら、そこは飛ばして次に進んでいただきたい。
実行できていない場合
方針は合っているのに成果が出ないときは、継続を疑いたい。繁忙期に一度止まり、そのまま戻っていないことが多い。
止まる原因はほぼ例外なく工数である。やり方を変えるより、量を減らして続けられる形にするほうが成果につながる。
確かめるための問い
以下に即答できるかどうかで、どの層に原因があるかの見当はつく。
- 地域の相場に対する自社の位置を把握しているかどうか
- 入社3年目の年収の目安を示せるかどうか
- 手当を金額と条件のセットで書いているかどうか
- 生活コストまで含めた比較材料を用意しているかどうか
初任給・給与設計を自社の言葉にする
初任給は相場との比較で見られるが、学生が本当に気にしているのは3年後の見通し。昇給の考え方まで示せると比較の土俵が変わる。
自社の話に落とすときは、地域の相場に対する自社の位置を把握している、入社3年目の年収の目安を示せる、この二つから確認するのが早い。ここが曖昧なままだと、どの手法を選んでも判断の基準が作れない。
あわせて、手当を金額と条件のセットで書いているも見ておきたい。ここは後回しにされやすいが、翌年に同じ議論を繰り返すかどうかの分かれ目になる。
よくある誤解
「成果が出るまで続けるべき」という考え方も、無条件には正しくない。合わないものを続けるより、合わないと分かった段階で早く手を引くほうが、結果的に採用人数は増える。
「初任給・給与設計は人事の仕事」という切り分けも、中小企業では機能しにくい。配属先の上長が何を任せたいかを言語化していないと、判断の基準が作れない。
「学生の質が下がった」という言い方も、原因の特定を止めてしまう。母集団の質は、対象の設定と伝える内容で決まる。集まる層が変わったなら、変えたのは自社の側である可能性が高い。
自社に当てはめて考える
次の項目は、採用担当だけでは答えられないものを含んでいる。配属先の上長と一緒に確認するほうが早く埋まる。
- 地域の相場に対する自社の位置を把握しているかどうか
- 入社3年目の年収の目安を示せるかどうか
- 手当を金額と条件のセットで書いているかどうか
- 生活コストまで含めた比較材料を用意しているかどうか
一度埋めたら終わりではない。翌年の採用が始まる前にもう一度見直すと、前提が変わっている箇所が見つかる。
よくある質問
Q. 担当者が代わると引き継げません。
引き継ぎで最も失われるのは、判断の理由です。何をやったかは記録に残っていても、なぜそうしたかが残っていないことが多い。記録には結果だけでなく理由を残しておきたいところです。
Q. 外部に任せるとしたら、どこまで任せられますか。
誰を採るかという判断は自社に残し、手を動かす部分を任せるのが基本の切り分けです。求める人物像と勤務条件が文章になっていないまま任せると、期待と成果がずれます。
Q. 複数の課題が同時にあります。どれからやるべきですか。
採用の流れの上流にあるものからです。母集団が足りていない状態で選考の設計を磨いても、効果は限定的になります。逆に、上流が足りているのに終盤で落ちているなら、選考側から手をつけます。
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この記事のまとめ
うまくいっている会社が特別なことをしているとは限らない。当たり前のことを、学生から見て分かる形で言語化できているかどうかの差であることが多い。
この記事は、株式会社エージェントベストが新卒採用の支援で得た知見をもとに構成した実務向けの解説です。特定の企業の事例や、年によって変動する統計値は扱っていません。制度・市況・各サービスの仕様は変わりますので、実際の判断にあたっては一次情報をご確認ください。
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