製造業の業界イメージの壁を越える|採用広報で伝えること
選考の途中で学生が離れていくとき、原因は最後の面接ではなく、最初に何を伝えたかにある。入口で渡した情報が薄いほど、終盤で比較に負ける。
イメージは変えられないが、迂回はできる
製造業という業種に対する学生のイメージを、一社の発信で変えることはできない。現実的な戦い方は、イメージの外側にある仕事を先に見せて、判断の順番を変えることである。
工場の立地がそのまま勤務地になるため、通勤圏の説明を省くと終盤で辞退が出る。技術職は同業他社と横並びで比較されるので、扱う製品と任せる範囲を具体的に書けるかで差がつく。
社内では当たり前のことが武器になる
自社の強みを聞くと「社員の人柄」「アットホーム」と答える会社が多い。これらは他社と区別がつかないので、採用広報の材料にならない。
代わりに、自社の製品やサービスが最終的に誰の手に届いているかを説明したい。製造業の会社では、この接続が学生に見えていないことが多い。
同じ打ち手でも、業種と地域が変われば効き方が変わる。うまくいかなかったときに手法のせいにする前に、前提が自社と合っていたかを見直したい。
発信する場所を絞る
採用サイト、SNS、動画、パンフレット。人員が限られているなら一つに絞る。絞るなら採用サイトが基本になる。
採用サイトは応募を取る場所ではなく、興味を持った学生が確認しに来る場所である。ここが空だと、接点の効果が消える。
まず用意する3点
予算をかけずに作れるものから始めたい。
- 入社1〜3年目の社員が実際に何をしているかの記録(職種ごとに1件ずつ)
- 自社の製品・サービスが使われている場面の説明
- 選考の流れと、各段階で誰が出てくるかの一覧
製造業で募集する職種を分けて考える
製造業が新卒で募集する職種は、生産技術、設計開発、品質保証、生産管理、製造オペレーターなどに分かれる。同じ会社の募集でも、職種が違えば競合も、学生が比較する軸も変わる。
たとえば生産技術と製造オペレーターでは、学生が見ている条件も、入社後に求められる資質も異なる。ひとつの募集要項にまとめると、どちらの層にも届かない文章になりやすい。
工場の立地がそのまま勤務地になるため、通勤圏の説明を省くと終盤で辞退が出る。技術職は同業他社と横並びで比較されるので、扱う製品と任せる範囲を具体的に書けるかで差がつく。
よくある誤解
「条件を良くすれば採れる」という考え方も、思ったほど当たらない。初任給は応募するかどうかの入口では強く効くが、入社を決める段階では決め手にならないことが多い。入口で足切りされない水準を確保したうえで、決め手は別に用意する設計になる。
「若手が定着しないのは世代の問題」という説明は、原因の特定を止めてしまう。採用時に伝えた情報と実際の仕事にずれがなかったかを確認するほうが、次の打ち手につながる。
「学生は安定を求めている」という説明も、言葉が大きすぎる。何をもって安定とするかは人によって違い、事業の継続性を指す人もいれば、勤務地が変わらないことを指す人もいる。
自社に当てはめて考える
ここからは自社の話になる。社内で答えが揃わない項目があれば、そこが手をつける場所だと考えてよい。
- 製造業で募集する職種ごとに、募集要項が分かれているかどうか
- 入社1年目と3年目に任せる範囲が書かれているかどうか
- 勤務地と通勤手段が具体的に書かれているかどうか
- 選考の流れと所要日数を学生に先に伝えているかどうか
答えられなかった項目のうち、最も影響が大きそうなものを一つだけ選び、いつまでに誰がやるかを決める。ここまで決めて初めて、点検が実行につながる。
よくある質問
Q. 同業他社と条件で横並びになってしまいます。
条件で並ぶなら、任される範囲で差をつけるしかありません。入社1年目に何を任せるか、3年目に何を任せるかを具体的に書けると、同じ条件でも見え方が変わります。規模が小さいほど、この部分は書きやすいはずです。
Q. 未経験でも採れる仕事かどうか、どう伝えればいいですか。
入社後1年目に任せる範囲と、そこに至るまでの教育の流れを書くのが分かりやすい形です。「未経験歓迎」という言葉だけでは、何をどこまで教えてもらえるのかが伝わりません。
Q. 社員の写真や声は必要でしょうか。
写真そのものより、何をしている人かが分かることが重要です。入社1〜3年目の社員が、どんな一日を過ごしているかを職種ごとに1件ずつ用意できると、それだけで比較の材料になります。
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この記事のまとめ
採用の設計は、一度作ったら終わりではない。毎年の結果を見て、どこを変えてどこを変えないかを決める作業そのものが設計である。
この記事は、株式会社エージェントベストが新卒採用の支援で得た知見をもとに構成した実務向けの解説です。特定の企業の事例や、年によって変動する統計値は扱っていません。制度・市況・各サービスの仕様は変わりますので、実際の判断にあたっては一次情報をご確認ください。
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